パウロヴィッチの穴
くろパパ咽頭癌確定からの ”平成のアダムスファミリー”271日間。

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父の声

 
2006年5月17日。くろパパにFAXを送る。
 
 
 
 
 
 
 
この日。父が自分の声でやり遂げる最後の仕事の日でした。
 
そして翌日からは期間も手術の可否も分からない入院。
 
 
「生涯現役」を望んでいた父ですし、
 
仕事も、それが許されるものでしたので
 
顔では笑っていても、きっと切ない想いを抱いたことでしょう。
 
 
 
病状をうかがう文面の最後に「長い間お仕事お疲れ様でした。」
 
と一文加え、夜FAXを送りました。













くろパパの仕事は経営コンサルタント。
 
「言葉」がすべて。
 
その「言葉」に魂を込めた「語り」によって人を動かす仕事です。
 
 
 

 
大企業から中小・小売りにまでも絶大な支持を受ける仕事ぶりでありました。
 
新聞への連載もあり、この時点でも続いていたのではと思います。
 
その他専門書の執筆などなど。
 
 
私自身も父が持つ「言葉」の魔力に魅了され、何かある度に指示を仰いだものです。
 
 
 
しかしながら、光り輝いていたのはやはり父の「語り」です。
 
彼の語り口は独特で、実娘が言うのもなんですが
 
一度聞き出したら誰をも魅了してしまうのは天性のもの。
 
選び抜いて使われる単語と文章センス。そして抜群な「間」と「つなぎ」。
 
そして口調。聞く側を飽きさせないどころか
 
自分のペースに引き込んでしまうという、くろパパ節。
 
笑わせるタイミングも逃しません。
 
 
 
 
もし手術が出来るとなれば、代わりに声を失うことになりますが
 
病気とか父親だからという個人的事情とはまた別の第三者な立場で
 
「とても惜しい」と感じるのでした。


 
くろパパとの時間。あと256日。 
 
 
 
 
 
 
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ムスメ。

《くろうさ》

くろうさ

上海生活3年生。専業主婦。


父。

《くろパパ》

くろうさの最愛の父親。

 

2007年1月逝去。61歳。

生前は経営コンサルタントに従事。

 

登場人物

《マヨ》

  くろうさダンナ 上海リーマン

 

《くろママ》

  くろうさ母親 乳ガン歴2回

 芸術家 着物デザイナー

 

《バカ兄》

  くろうさ3兄妹長兄 某出版社勤務

 

《ダメ兄》

  くろうさ3兄妹中間兄 某ベンチャー勤務

 

《おやびん》 元勤務先病院理事長

 

《姐さん》 元勤務先病院直属上司Dr.

 

 

用語解説

《パウロヴィッチ》

くろパパのカトリック洗礼名が「パウロ」

だったことから、なんとなく。

 

《穴》

くろパパの咽頭癌摘出後

喉仏の下、ちょうど両鎖骨の間に

直径約4cmほどの穴が作られ

肺と直結して呼吸をしていた、その穴。

 

《咽頭癌》

鼻の奥から喉にかけて位置する器官で

場所により上・中・下と分類されるが

くろパパは喉の部分の下咽頭癌。

 

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